デスクトップパソコンに比べて、ノートPCやスマートフォン・タブレット等（モバイル端末）は手軽に持ち運べて使え、非常に便利ですが、その分使用者のセキュリティ意識は低い傾向にあります。 モバイル端末使用者は若年層が多く、ネットやセキュリティへのリテラシーがさほど高くないままのユーザー層が一定数存在している事に起因します。
　また、スマートフォンではOSがブラックボックス化されており、ユーザは管理者権限を持ちません。 そのため、数多くあるスマートフォン向けのアプリケーションソフトウェアの一つ一つの挙動を把握する事は非常に難しいものです。 アプリとマルウェアには明確な境界線はなく、どちらも同じソフトウェアという括りなため、インストールは完全に自己責任であり注意が必要です。
　また近年では、出先の飲食店などで少しの離席の間に、テーブル上に置いていたモバイル端末が盗まれるなど、盗難被害も多数発生しています。 盗難されたモバイル端末から個人情報が漏れることもあり非常に危険です。

下記では近年に起こったモバイル端末犯罪事例の一部を紹介しています。

犯罪事例

　会社のオフィスからノートパソコンを盗んだ疑いで、派遣社員として働いていたイスラエル人の男が逮捕された。
男は派遣社員として働いていた会社のオフィスから、ノートパソコン１台を盗んだ疑いが持たれている。 会社で機材の確認をしていたところ、ノートパソコンの数が1台少ないことに気が付き調査していたところ、 容疑者としてイスラエル人の男が浮上し、警察の捜査により該当ノートパソコンがフリマアプリにより出品されていた。

注意点・対策

　今回の事件で社内情報の流出や個人情報の漏洩といった被害は出ていないようですが、社内の機材でもワイヤーロックをかけるなど、盗難への備えは必要です。

犯罪事例

　北海道の芽室町子育て支援課の職員が役場庁舎の打合せスペースで勤務を行っていたが、約50分間の昼食休憩のために業務用ノートパソコン及び個別台帳を置いたまま離席し休憩から戻ったところ、パソコン等の紛失に気付いた。 同町ではその後、庁舎内の防犯カメラの映像で不審な人物の行動を確認し警察署へ通報、被害届を提出した。 5月24日に被疑者逮捕と盗難された業務用パソコン及び個別台帳を押収したと連絡が入った。 盗難にあった業務用パソコンには、盗難後にサーバへのアクセスはないことを確認しているが、ハードディスク及び個別台帳に含まれていた個人情報が漏洩したかは不明。

注意点・対策

　今回は50分と長めの離席ですが、数分の離席でも盗難のリスクはありますので、盗難防止のワイヤーロックを使うなどの対策をしましょう。 持ち運びに便利で、出先でも使いやすいコンパクトに収納できるワイヤーロックも販売されています。 また、運悪く盗難されたときのために、WindowsOSであればディスクの暗号化をお勧めします。 ただ、ディスクの暗号化はOSが起動した状態では復号されていますので、離席の際はOSをシャットダウンしましょう。

犯罪事例①

　GooglePlayのアプリケーション配布サイトにおいて、これまで無害だったソフトウェアが、アップデート後にマルウェア化。 これまで数年間、1000万以上のダウンロード数があり多くのユーザが使っていたスマートフォン・タブレット用のバーコードスキャナアプリケーションが アップデート後にユーザが望まない広告を表示するというマルウェアが内蔵されていた。 この広告は悪意のある詐欺サイトへの誘導などが目的とみられる。

注意点・対策

　今回のケースはGoogleストアが配信していることから、防ぐのが難しい事案だったが、アプリケーションのインストールには細心の注意が必要で、 アップグレードしなくても使える場合はアップグレードされたアプリの評価を見てからアップグレードを行うといった対応が必要になります。

犯罪事例②

　子供が親のスマートフォンでスマホゲーム内課金してしまい、100万円以上の請求が発生

注意点・対策

　スマートフォンやタブレットが小さいころから身近にあり、特に金銭的な感覚がなく扱っているため、ゲーム内のアイテムを無制限に購入してしまい多額の請求が来てしまうという事案が多く発生しています。 スマートフォンやタブレットではゲーム内課金だけでなく、いろいろな支払いをスマートフォンやタブレットの毎月の通信料金支払いに含めるサービスがありますが、 このサービスは端末を操作するのが誰でも構わず、1タップで買い物ができてしまう設定があります。 この設定を有効にしてしまうと、誰でも簡単に買い物ができてしまい非常に危険です。
　また、クレジットカード情報を登録しておいて、スムースに買い物ができるようにしているユーザも多いと思いますが、これも危険です。 子供のゲーム内課金だけでなく、もしスマートフォンやタブレットを落としてしまった場合などに備え、ネットでの買い物は1タップでの支払い設定を無効に、またクレジットカード情報を残さないようにしましょう。

犯罪事例①

　フリー（無料）Wi-fiの危険性

注意点・対策

　昨今、街中で便利に使えるフリーWi-fiが増えていますが、フリーWi-fiは盗聴や乗っ取りなのどの危険が潜んでいます。 フリーWi-fiの通信は暗号化されていなかったり、暗号化されていても店舗やサイトで暗号化鍵が公開されているので、悪意のある第3者からは盗聴し放題となります。
　また、悪意のある第3者が公式のフリーWi-fiに似せた偽のアクセスポイントを開設し、接続してきたユーザの端末に侵入し端末自体を乗っ取りデータや個人情報等を盗みます。
　フリーWi-fiには無闇に繋がず自前のポケットWi-fiを使用し、安全な通信を心がけましょう。

犯罪事例②

　本物の金融機関やECサイトの画像を使った偽サイトによるフィッシング詐欺

注意点・対策

　スマートフォン等のメールで、金融機関やECサイトから送られてきたように見えるフィッシング（詐欺）メールで、一見すると本物のように見えます。 数年前までは日本語が変であったり、改行位置がおかしかったりと、一目で怪しいと思えましたが、最近のフィッシングメールは日本語も体裁もまともになっていることが多いです。（Google翻訳が優秀になったから？）
　また、送信元のメールアドレスも偽装されており、メールヘッダを見ないと偽装とは判別できません。 メールの内容はアカウントを停止した等の内容で、解除用のリンクが貼られていますが、リンク先は詐欺サイトのログイン画面であり、うっかりログインしてしまうとID、パスワードが抜き取られてしまいます。 スマートフォン等のメールではリンク先情報が見えず、非常に危険なので、メール内のリンクには絶対に触れないように注意が必要です。

▼詐欺サイトへの誘導メールの例▼

　 　2021年現在、SNS上ではいろいろな問題が発生しています。 特定の個人への誹謗中傷の書き込みにより被害者に苦痛を与え、時には被害者が自殺に追い込まれています。 ちょっとしたいたずら心や憂さ晴らしと思った書き込みが、思わぬ事件に発展するケースが多くなっています。 匿名だから大丈夫だと思い誹謗中傷を投稿してしまうと、投稿先運営会社への情報開示請求などで投稿者が特定され、訴えられるケースが増えています。
　また、SNSアカウントの乗っ取りやマルウェアの拡散による個人情報の流出等、SNSを利用することによるリスクも増えています。 事件事象からセキュリティを学び、安全なSNS活用を心がけましょう。

下記では近年に起こったSNS犯罪事例の一部を紹介しています。

犯罪事例①

　タレントへの執拗な誹謗中傷の書き込みにより容疑者女性を書類送検。
タレントが公開しているブログへ、誹謗中傷コメントを150回以上書き込んだとして、奈良市の女性を東京都迷惑防止条例違反容疑で警視庁が書類送検した。

注意点・対策

　匿名での書き込みでも、サイトを運営している会社への情報照会により、書き込み者を特定できます。
また、書き込みをした場所に関わらず、ブログ公開者の居住地域での条例が適用されます。

犯罪事例②

　無料通話アプリ「LINE(ライン)」で、利用者の個人情報が中国の関連会社から閲覧可能になっていた問題で、日本の利用者のデータは国内のサーバで保管し国内で閉じていると説明していたが、 データは韓国サーバにあり、中国からもデータへのアクセスがあることを説明していなかった。
　この問題について第三者委員会は9月頃まで追加の調査を実施し、最終報告書と再発防止策などにまとめるとしている。

注意点・対策

　LINEに限らず、SNSでは個人情報に関わるものは発信しないように注意が必要です。 特に写真や動画などは写っている背景や時間帯から個人を特定されるなどして、個人名での誹謗中傷やストーカーなどの被害に結びつくので注意しましょう。

犯罪事例③

　SNSを悪用し、女子中学生に下着姿などの動画や画像を送らせたとして、福岡県警は大学4年の容疑者を不正アクセス禁止法違反と児童買春・児童ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕した。
　サイバー犯罪対策課によると、容疑者は、自宅でタブレット端末を使って面識のない女子中学生のSNSに不正にログインしてその中学生になりすまし、 フォロワーである静岡市の女子中学生（13）に「母親が下着をつくる仕事をしている。手伝ってほしい」とメッセージを送って下着姿などの動画や画像を撮影させて送らせ、データを保存した疑いがある。 捜査関係者によると容疑者は「インスタグラム」で若い女性を物色し、誕生日や名前といった情報からパスワードを推測してアカウントを乗っ取っていたとみられる。

注意点・対策

　この事案では乗っ取られた女性は推測されやすいパスワードを使っていたと思われます。 推測されやすいパスワード、パスワードの使いまわしは非常に危険であると再認識できる事案です。 パスワードは推測されにくいものに設定するよう心がけましょう。

犯罪事例

　フォロワーからの「あなただと思います」等の動画や写真へのリンクは危険。

注意点・対策

　ある日フォロワーから「ここであなたを見ました」「このビデオいつでしたか」「あなたみたい」「あなただと思います」といったリンク付きのメッセージを受信し、 リンクを確認したところ、マルウェアに感染してしまったという事案が多数発生しています。 フォロワーからのメッセージということで何の疑いも持たずにリンクをクリックしてしまいますが、リンク先はマルウェア配布サイトであったり、ユーザ情報を抜き出すための偽サイトであったりします。 マルウェアに感染すると感染源と同じようなメッセージをフォロワーに送信し、感染者を増やそうとします。
　SNSでのメッセージにリンクが含まれる場合、Webサイトの安全性をURL入力で調べられるサイトチェッカーを使用し、安全かどうか確認しましょう。 また、SNS経由でのアプリインストールはせず、GooglePlayやAppleStore等の公式なアプリ配布サイトからダウンロードしましょう。

サイトチェッカー

　 他の多くの犯罪と違い、サイバー犯罪はネット上で起こるので”距離”という概念を持ちません。 そのため国境を超え、地球の反対からでも安易に悪意を発信し続ける事が可能です。
　２０１２年に開催されたロンドンオリンピックの期間中には、２億件ものサイバー攻撃が行われたと言われており、これを受けて１６年開催のリオオリンピックでは万全のセキュリティ対策が行われたため、大きな事件は確認されなかったと言われています。 それでも開会直後には攻撃のピークを迎え、閉幕までに４０００万件もの脅威が発見されていたようです。 ２１年に開催予定の東京オリンピックでは、防御にあたるセキュリティエンジニアが８万人も不足しているという数字が出ています。
　国家間だけの問題ではなく、各企業、各個人でもサイバー犯罪に備えてセキュリティ対策を行う事は、引いては自国を守る事と直結するのです。

下記では近年に起こったサイバー犯罪事例の一部を紹介しています。

犯罪事例

　スポーツクラブNAS株式会社は外部からの不正アクセス受け、一部の店舗で会員管理システムがランサムウェアウイルスに感染した。
　同社のファイアウォールに設定していた暗号化キーを、第3者が何らかの手口によって特定し、サーバへ不正アクセスしたことでランサムウェアに感染し、サーバに保管していたデータがすべて暗号化され、同社の一部店舗で運用していたシステムが使用不能となった。 またこの事案ではデータの窃取は行われていないのか、身代金要求はされていない。

注意点・対策

　今回の事案では暗号化キーが特定されているが、暗号化キーは絶対に外部に漏れないように注意が必要で、パスワードと同じく同じ暗号化キーを複数システムで使いまわさないように注意しなければなりません。

犯罪事例

　ソフトバンク株式会社は、楽天モバイル株式会社およびソフトバンク元社員に対して、営業秘密の利用停止と廃棄等、ならびに損害賠償請求権の一部として10億円の支払いを求める民事訴訟を東京地方裁判所に提訴したと発表した。
　ソフトバンク元社員は、ソフトバンク社在籍時に秘密保持契約を締結していたが、同社営業秘密に関わる情報を不正に持ち出したことが判明し、警視庁へ相談、被害申告するとともに捜査に協力してきた。 当該元社員は、ソフトバンク社在籍中にソフトバンク社営業秘密である4Gおよび5Gネットワークの技術情報を不正に持ち出しており、2021年1月12日に不正競争防止法違反の容疑で警視庁に逮捕された。

注意点・対策

　昨今、社員（契約社員含む）のデータ持ち出し事案が多く聞かれます。 部外に流出させないためにも、データアクセス権限の設定をしっかり行い、不用意に役職外のデータにアクセスできないようにしましょう。 またデータコピーはログが残るような配慮も必要です。

犯罪事例

　BTCボックス株式会社(暗号資産交換業)は、同社のメール送信サーバに不正アクセスがあり、同社を装った詐欺メールの不正送信があったと発表した。
　これは外部から同社メール送信サーバへ不正接続することで、顧客に対し同社を装った詐欺メールがBTCBOX 名で不正送信されたというもの。 このメールサーバへの不正アクセスは、Webサーバに対し不正アクセスがあったことで、Webサーバ上に保管されていたメールアドレス及び一部の本人確認用の画像データが流出したことにより不正にアクセスされた可能性がある。 同社では不正アクセスを防止する緊急措置として、外部から対象となるサーバへのアクセス及び外部へ出る情報のアクセスを大幅に制限するなどの対策を実施しており、顧客から預かっている資産について影響は無いという。 同社では今後、監視態勢とWebサイトの強化を図るとのこと。

注意点・対策

　標的型メール攻撃では、メールサーバへの不正侵入により正規のユーザとしてなりすましのメールにより、取引先を装ったメールによりマルウェア感染を狙います。 メールサーバへの不正な侵入とは、IDとパスワードの不正な入手により行われます。 メールアドレスとパスワードのセットが漏洩し、ダークウェブ上で公開されている事案は多く、攻撃者はそれらの情報を使って攻撃を行います。 パスワードは漏洩しないように注意するとともに、メールサーバは社外IPアドレスからの送信には2重に認証するなど、制限をかけましょう。

犯罪事例

　Webサイトの認証情報を偽サイトにより入手してアカウントを乗っ取る手口

注意点・対策

　 銀行やショッピングサイトを騙るメールにより、メール内のリンクから偽サイトにアクセスしてしまい、IDやパスワードを入力、送信してしまい、アカウントを乗っ取られる被害が出ています。 認証強化で多要素認証（ID・パスワードに加えてスマートフォン等での認証コード発行など）を実装しているサイトも多くなってきましたが、現在多要素認証も攻撃により突破されるようになりました。
　認証突破の概要や対策をPDFにまとめましたのでご覧ください。 (PDF：Webサイトの認証を突破？対策はできる？)